芽衣ちゃんFCvs叶芽衣親衛隊
芽衣ちゃんFCvs叶芽衣親衛隊
真咲翼 04月22日
「芽衣ちゃん見たか?」
 1人の男子学士が言う。

「見た見た。めちゃくちゃかわいいんだよな。縦ロールの髪の毛にひらひらのロリータファッションがツボだよな」
「なんだよ。芽衣ちゃん、芽衣ちゃんって。気持ち悪いんだよ」

と仕事一筋、恋愛に無頓着なルフィーズ・アイウェスト(mz0133)は、皮肉った。そこへ偶然の流れ星、芽衣が通っていった。

「な、かわいいだろ?」

とルフィーズに話しかける。彼は石になっていた。

「おい、しっかりしろよ、ルフィーズ!」

ようやく動き出した石はこう話した。

「オレのプロフィールの『仕事■□□□□恋愛』を書き変えたい」
「へ?」
「芽衣ちゃんファンクラブを作ろう」
「えぇぇ!」

 こうして数人の有志の元、芽衣ちゃんファンクラブが設立された。リーダーはもちろんルフィーズ。最初は時々メンバーが集まって、芽衣について話し合うだけの会であった。しかし悪乗りをするメンバーがいた。

「芽衣ー。ほらおいでよ」
「はーい、お姉ちゃん」

露天風呂で響いたこの声。

「芽衣ちゃん入ってるよ!」
「どうする? のぞかない?」
「バレたらどうするんだよ」
「大丈夫だよ」

とファンクラブ会員の男子学士1人が塀を登って少しだけ、一瞬だけ顔を出した。

「くせ者!」

と、石がのぞきに向かって飛び、ヒットした。彼はそのまま塀から手を離し、落下した。

「まったく。これじゃおちおち入浴もできないわ」

と石をまだにぎっている叶飛鳥は男湯の方を睨んでた。
 その一件は学園中でも有名になった。ファンクラブを名乗るものが叶芽衣のセクハラだのストーカーだのをすると学園の新聞の一面に載っていた。
 空き教室に集まっていた芽衣ちゃんファンクラブの仮部室に飛鳥と数人の学士が乗りこんだ。

「初めまして、じゃない人もいるけどこんにちは。わたしは叶芽衣親衛隊のリーダー、叶飛鳥よ。そちらのリーダーは?」
「ルフィーズ・アイウェストだ。どんな要件なんだ?」
「芽衣のファンクラブとかやめてほしいのよ。あんな気持ち悪いことまでやって。統率力のない怪しい団体はお引き取りください」
「奴にはやめてもらったよ。それ以上にご不満が?」
「本当に好きなら親衛隊に入っていただきたいわ。それが無理なら対決しましょう」
「どんな対決だよ」
「彼女をどれだけ守れるか。つまりは『守りながらの戦い』で勝負よ! これを機に寝返る人もいるかもね」
「オレは寝返りしないぞ! その勝負受けて立つ」

 負けず嫌いのルフィーズはそう叫ぶ。
 そしてファンクラブ側、親衛隊側とメンバーを選出した。
 
 FC側はルフィーズ・アイウェスト、進藤・翔(シンドウ・カケル)の2人。

「なんだよ! こんだけしか戦える奴いないのかよ」

FC側でのぞきをした人はやめてもらったので、実質3人となってしまったFC。1人は戦いに自信がなく、断固拒否された。

 一方。親衛隊側は人数豊富、最強の人物が選出させた。ディノント・ハーディアスと時任・双魔(トキトウ・ソウマ)の2人。2×2の勝負である。

「2勝した方が勝ち。1勝1敗ならもう一度、メンバーから選出された者同士で戦うこと。これでいい?」

と、飛鳥の提案にルフィーズはうなづいた。

「ふっふっふ〜、何処のどいつだ? 飛鳥ちゃんと芽衣ちゃんの風呂覗いた馬鹿野郎は? 素直に名乗り出たら言い表せない位の感じで許してあげるぞ☆」

とキラめく笑顔でこちらを見る色男、双魔にFCメンバーは苦笑しつつも、トカゲが背中に迷い込んだように感じ、「芽衣ちゃんの覗き連中は退会してもらった」などと訂正する気も失せた。

「飛鳥ちゃん、心配ないぞ〜、俺に任せておけばNoProblem♪ さぁさぁさぁ! 何処のどいつからぶっ飛ばされたいか、覚悟決めた野郎からかかって来やがれ!」

 そこで、翔が前に出た。

「動くパペットを守るぷー」
「飛鳥ちゃん、だいじょぶだいじょぶ。2人とも俺が守って差し上げましょ。そうそう、お礼はキスで良いからな〜☆ あ、それともして欲しい〜?」
 飛鳥はしばらく黙りこくってしまった。
 対戦する前に翔はパペットに、芽衣の面影を思い起こされる容姿へと、仕立て上げられた。

「本格的だねーきみ。そっちからいかないなら、こっちから行くぞ。アルスヴァルテ!」

パペットに傷がつかないように反物質効果を付与させた矢を天に放った。その矢は数千、数万と分裂し、天から雨の様な大爆撃を落としてくる。とても避けられるものではない。

「これで終わった、かな?」

矢が落ちてきた周辺は煙が上がり、そこには翔の姿と守り切れなかった芽衣ちゃんパペットがいるはずだった。

「いない?」

動揺する双魔の後ろには、翔がいた。

「芽衣タンのためなら何でもできるぷー!」

天空の矢を避け、知らぬ間に相手の後ろに回っていたのだ。思わず振り向く双魔。一瞬唾を飲みこんだあと、後ずさりし、いつもの口調で話し出した。

「んでもって、は〜い、注目、俺の手足には何が付いているでしょう? そうそう、お前ら全員地面に生き埋めにできる面白魔導具だ」

ボコッっという音から始まって、地面がだんだんゆるくなり、埋没していく。飛鳥が、

「ちょっと、わたしたちまで巻き込まないでよね!」

と、この事象を止めるために、魔導書を取り出した。その瞬間、地面がトランポリンのようにポーンと反発し、その場にいた人は全員浮かび上がった。
 この現象は、優等生でもある翔の夢想魔法であり、特に大きく反発した――双魔の持っていたパペットは翔の手の中に。

「しまっ……」
「これも貰うだっちゃ」
「うそ……時任くんが負けるなんて……」

 地面は元通りになり、翔は新しく手にしたパペットを手にし、セクシーな衣装を着せた飛鳥のパペットに変身させ、

「何か姉妹で、コンプリートだじょー」

と、ひたすらと喜びパペットに抱きついたり頬ずりしたりする翔を見て、

「きもっ!」

という飛鳥の声と同時に、そこにいるメンバー全員が引きつった顔をする。そんな奴に負けた(正確にはパペットを取られた)双魔は、失意のどん底に落とされた。

「じゃ、あんなの放っておいて2回戦。そっちはルフィくんでいいの?」

 飛鳥はFCサイドを指差し、

「ああ」

と彼は返事をした。

「じゃあこちらはディノント・ハーディアスくんを出すわ」

飛鳥の後ろから黒髪のミドルヘアが風になびき、典型的な日本人の風貌をする好青年が現れた。

「芽衣ちゃんに迷惑をかけているとかって聞いたぞ」

白い歯を見せながらディノントは口を開く。

「さーあ。どうだか。誰かを気に入って、その子の話をみんなですることの、どこが悪いわけ?」
「だから覗きしただろ?」
「俺じゃねーし、やめてもらったし」

 冷汗をたらすルフィーズ。そうだ、俺のせいじゃないのに、何でこんなことやってんだ。疑問を罪のない青空に問いかけ、「俺が勝てばこっちの勝ち」という好条件を活かすべく、立ち向かう。

「?」
 ディノントは即座にいなくなった。いや、どこかに隠れたのだ。ルフィーズに直感が宿り、パペットと一緒に空へ飛ぶ。そこに繰り出されたのは拳銃の弾だった。

「やべー。物陰に隠れて撃つ作戦かよ」

撃ってきたのは隠れるのに最適な学園の林。ルフィーズは囮(おとり)のように、林に入っていった。

 中に入ってからは、お互いがお互いの存在を確かめなくてはいけない、攻防戦となる。ルフィーズは警戒しながら歩いていると、ありえない出来事に遭遇した。

「マジかよ!」

後ろに背負っていたパペットがいなくなったのだ。

「これが連中に知れると早々に俺の負けじゃねーか」

ルフィーズは完全に気配を消し、ディノントとそこにおそらくある2体のパペットを探した。音をたてず、ひっそりと。しかしそこである計算が浮かんだ。林から出たところで奇襲をしようと。

 出口付近の林で待機していると、ディノントの気配を感じた。

「いくぜ!」

剣を手にし、風を切るようにディノントへと振り下ろした。

「やるねぇあんた。姿を移動する前に攻撃を仕掛けてくるとは。でもさすがにこれまでは予測できなかったかな?」

ディノントの腕には薄型の小手がしてあり、かなりの強度なため、剣は貫けなかった。

「じゃ。2人分のパペットを届けにいくよ」

というセリフと共に姿を消した。ルフィーズは探しまわったが見つからず、皆のところに戻るとディノントはいて、FC側の負けは決定した。

「こいつ絶対卑怯だろ!」

と逆上するのは必至のこと。こんな神業ばかり使われちゃ、誰も敵わない。

「悪いねぇ。俺と勝負することになったのが運のつきなんだよ」

 しかしこれでは1勝1敗。もう一度代表を出さなくてはいけない。

「あのー、騒がしいんですけど、なにかありました?」

 両手に買い物したビニール袋を持った10歳くらいの中性的な子が立っていた。飛鳥とルフィーズはこれをチャンスにと勧誘活動に走った。その結果、

「じゃあ、親衛隊側3人目の対戦者になるね」

と決めたようだ。

「名前は?」

飛鳥は気さくに話しかけた。

「リョウ。アイヅキ・リョウ」

FCサイドは他に戦おうとする者がいないので、今回もルフィーズが出ることにした。

 バトルは始まったのに、緊張した空気のまま2人の時は止まっていた。

「そっちがいかないならこっちから行くぜ!」

 剣を持ち地面を蹴りあげ、低空ジャンプをして迫ってくる、その刃を避けるかのように、リョウは兎の姿になり難を逃れた。リョウはつい考え込んでいたのだ。2つのグループが仲良くできないものかと。とりあえず気絶の効果を付加した魔力弾を放つ。ピンボールのような動きを、『ルナのリング』を使い、地面に踊らせた。しかし運動神経が抜群な相手はするりとかわす。

「これで終わりです……舞え氷雪の嵐……百花繚乱!」

 地面がぼこっと穴があいたと思えば氷の柱が空を刺す。それと同時に雷の竜が出現し、柱を砕き、巻き込みながらこの地一帯に嵐が舞い散りだしたのだ。

「これくらい乗りきるさ」
とルフィーズは身軽な動きで難を逃れていく。翔はパペットのコンプリートに満足したのか、まだ満足な気分に浸って寝ころんでる。

 親衛隊側の方にも氷雪の嵐が飛び散り、

「みんな、気をつけて!」

と飛鳥が空の遠くまで飛んでいける高らかな声で、メンバーの安全に気を配る。

 その様子を見たリョウは、
(僕はこれでいいんだろうか……戦うことで解決するの? それに……あっ)

 気がつけばリョウがコントロールできないほど、暴走状態になっていた。当の本人はとっくに気絶していて、打つ手が思いつかない。

「なにか嵐を静める魔法はないかしら?」

飛鳥を始め、両グループは知恵を出し合うものの、結局逃げ惑うばかりだった。そこに。

 すべての現象を一瞬にして消し去った者がいた。ギンガムチェックのリボンと薔薇を縫いつけられたステッキを持ち、被害現場にそれを向けた人物。まぎれもなく飛鳥の妹、叶芽衣であった。

「お姉ちゃんたち、なにしてるの?」

 冷汗が一気に出てくる飛鳥。同様の症状が発生した者数人、気持ちは慌てているのに足が凍りついている。
 カールした長い髪をふわりと浮かせながら、飛鳥とルフィーズの元へやってきた。

「さっきから騒がしくしてるの、お姉ちゃんたちでしょう? やめてくれる? こんなことされちゃ、オープンテラスでゆっくりとロイヤルミルクティーが飲めないじゃない」

芽衣は飛鳥の方に、ルフィーズの方に、ゆっくりと軽蔑の目を180度回転させた。

「あ、かわいい〜。ウサギさん!」

 リョウの方をみた芽衣はすぐに抱きしめようとしたが、気絶から目覚めた途端、いたたまれなくなって逃げ出してしまう。

「ごめんね。芽衣。一緒にお茶にしましょう」

と飛鳥は妹のところに駆け寄った。そして彼ら親衛隊の方に振り向き、

「みなさん、ごめんなさい。親衛隊、解散しようと思います」

「そんなのありかよ」という気持ちのまま、親衛隊はぞくぞくと解散していった。

「俺もなんかどうでもよくなった」

とFCの方も散り散りに去っていった。
 この話は75日ほど、「馬鹿な連中が1人の女の子をめぐって馬鹿をした」という話として、学士に語られることとなったのだ。
ディノント・ハーディアス(mr0772) / 男性 / 数えていない
進藤 翔(mr0875) / 男性 / 17歳
リョウ(mr1331) / / 5
時任・双魔(mr0183) / 男性 / 19
叶・芽衣(mz0107
[創界管理局] [ウルドの門] [オープンテラス] [講義堂] [美術館]